京焼 寅介作の束柴の細水指のご紹介です。
こうした普通の水指よりも細長い水指を「細水指」と呼び、
「中置」(なかおき)に用います。
「中置」とは風炉を畳の中央に据えて、お茶を点てることを言います。
10月初旬から炉開き(11月)までに使います。
火気が恋しくなる、この時季は冷気を感じるため、
風炉(火気)を客の方に近づけ、水指を勝手付の方へ遠ざける
心尽くしの扱いとなります。
「束柴」(たばねしば)とは、柴を束ねたもので、柴は「柴刈り」の柴で
山野などにある雑木のことで、薪としての燃料や暖をとるため火にくべられます。
山で小枝などを集めてきて、それを縛って束にして
家や納屋の辺りに立てかけて置く様子が、秋から冬にかけての
季節の情景として、目に浮かんできてとても情緒があります。
この水指を使う頃と、「束柴」の季節はぴたりと一致しています。
黄瀬戸のような本体のベースの色に、木を思わせるこげ茶色が
縦に所々入れられています。
縦に溝が無数に入れられて、「柴」が表現されています。
その柴を束ねる太めの紐が緑色で作られていて、色彩のポイントとなっています。
その紐の部分だけ、柴が少しだけ食い込んで細くなっており、
リアルさも表現されています。
更に蓋の摘みは、柴の先端が三つ集まったように作られており
とても洒落ています。
これだけの造作がなされていても、見た目より軽く
全体に薄手に作られていて、ろくろの技術が高いことがわかります。