山中塗から田中宗凌 作の香合のご紹介です。
香合とは香を入れる蓋付きの器で、茶道で炭斗に仕組んだり
棚に飾ったり、帛紗や紙釜敷にのせて床の間に飾ったりもします。
風炉の時期は香木を入れるため、漆器が使われ
炉の時期は練り香を入れるため、陶磁器製が使われます。
鑑賞の対象となることが多く、大変多くの種類があります。
この香合は、暑い時期にふさわしい団扇(うちわ)の形をしており
けやき材を使って作られており、持ち手の部分は竹製と思われます。
表面には「曳舟」(ひきふね)と言われる、有名な柄が金と緑で
描かれています。
「曳舟」は軸や風炉先などでよく見られ、
「引く人も引かれる人も水の泡浮世なりけり淀の川舟」という詩も
一緒に書かれている場合があります。
舟を引く人も引かれる人も立場が違うだけで、同じ人間であるという意味です。
曳舟の画には、そのような意味が込められています。
舟とそれを引く人と波は金字で描かれており、シルエットのようで
趣きのある画となっています。