数年前からの傾向ですが、日本の伝統工芸品の中に

もう出来ないものが出てきました。

 

職人の高齢化や廃業などで今まで出来たものが

出来なくなるケースが続発しています。

 

これは単純に実質賃金が年々低下していることで、器にまでお金が回らず

売れ行きが落ちていることが原因の一つとして考えられます。

 

また生活様式が変わってきて、いい器を永く大切に使うというよりは

安価な器を使い捨て的に使うことが多くなっているように感じます。

 

また、婚礼や法要など慣習が簡素化あるいは省略されたり、様々な行事の自粛などで

記念品などで工芸品を使うことが減っているということも影響が大きいと思います。

 

産地によっては、工芸品を作る職人さんの生活が成り立たず、

成り立たないため後継者もできず、自分の代をもって廃業していっているように感じます。

 

自然淘汰と言われたら、それまでですが何百年も続く、世界に誇れる日本独自の伝統工芸の技術が

消滅していくのは、本当に残念でなりません。

 

伝統工芸の技術は一度消えてしまうと、復活はまずありません。

 

それは、何百年もの間、すべて人から人へ技術を脈々と伝えてきているからです。

 

しかも、その技術は何十年もかかって職人が習得して一人前に育っていくわけで

数年で習得できるようなものではないんです。

 

日本の宝である、伝統工芸の技術の消滅はすでに始まっています。

 

完全に消滅するまでのカウントダウンが始まっている産地も実際にあります。

 

完全になくなってしまってからいくら惜しんでも、二度とよみがえることはありません。

 

この傾向に歯止めはかけられないのでしょうか。

 

同じ日本人として、工芸品を扱う者として、何百年も培ってきた日本独自の貴重な

技術の消失は、最終的に日本の損失として、いずれ我々に跳ね返ってくるような気がします。

 

日本にしかない技術、日本にしかできない事、世界にはない日本にしかないものを

もっと大切にしなくてはいけないのではないかと、個人的には思います。