備前焼から、伊勢崎競 作の花入れのご紹介です。

この花入れは、掛け釘が後ろ側に付けられていることから

本来は掛け花入れとして作られています。

しかし、その端正な姿から床の間などに、置いて使って頂いても

小ぶりではありますが、十分に使える花入れです。

口作りもしっかりとしていて、下へ行くほど次第にすぼまっていく形は

とても整っており、肩の部分の丸みを帯びた姿は

とても美しい造形となっています。

上半分には、ろくろの跡が残されており、下半分は

表面が整えられている感じがします。

備前の土は石がたくさん混じっているので、細かな石の跡や

ピンホールやそれ以上の穴も所々に点在し、備前焼の味わいを

感じることが出来ます。

また、花入れの上部、肩の付近に「石はぜ」が確認できます。

「石はぜ」とは、素地の中に混入していた砂石が焼けはぜて、

露出し景色となったものを言います。

周囲の素地に割れ目が生じて、砂石が露出し、その砂粒が溶けて

膨れ出たり、石の角が丸味を帯びたりして、奇抜な景色を表わしたものです。

水が漏れないことから、昔から茶人には大変珍重されました。

「石はぜ」は、偶然の産物であり意図的に作りだすことが、

非常に困難であることから、大変貴重なものであるといえます。