この火入れは安南を写して万古焼の黒石窯で
作られたものです。
火入れとは中に灰と小さな炭を入れて、
本来は煙草の火種の器です。
灰の表面に細かい筋を入れて体裁を整えて
使います。
特に茶道では莨盆の中に入れ、茶会では
正客のすぐ近くに置かれますので脇役では
ありますが、よく目につき鑑賞の対象と
なりますので重要な道具の一つです。
火入れの大きさは莨盆の大きさや高さなどに
左右されますのでバランスよく組み合わせる
ことが必要となります。
安南とは元々、ベトナムで作られた陶磁器の
ことでベトナムでは、中国の陶磁器の影響を
受け、早くから白磁や青磁が
焼かれていました。
14、15世紀からは染付や赤絵の製作も
始まりました。
日本とベトナムの間には室町時代末から
江戸時代に掛けてかなりの交易があり、
多くのベトナム製の陶磁器が
もたらされました。
その中の安南を写して作られています。
染付は釉薬の下のコバルト顔料がにじんだ
様子から、絞り手と呼ばれ茶人に大変
喜ばれました。
外側全面に花唐草とトンボの絵付けが
されており、とてもよく描かれています。
内側と高台にはラインが入れられており、
これも安南の特徴です。
大ぶりでたっぷりとした火入れです。